瓦の都市景観

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土と陶の工房 美乃里

地域に対する文化・芸術の発信拠点として、景観への「調和と異化を両立した湾曲屋根。」(平成10年度「グッドデザインひょうご」大賞受賞平成11年度「第10回 甍賞」金賞(建設大臣賞)受賞)

近年、大阪の衛星都市として多くの企業が流入し、工場や貸倉庫、店舗付集合住宅などが乱立している八尾市。この地に室町時代から住み続け、いまや樹齢400年を超えるクスノキとともに街の変転を見守ってきた施主の依頼によって「土と陶の工房 美乃里」は完成しました。街並みから情緒が失われ、文化・芸術に対する意識が薄らいでいく現状を憂う気持ちが、陶芸教室を軸とした文化交流拠点の建設を決意させたのです。

無秩序な街並に溶け込ませつつも、登り窯を模した湾曲した形態を取ることで異化を図っている。
(撮影:絹巻豊)

(撮影:絹巻豊)

この施設の概要は、間口12m・奥行100mという懐の深い敷地を活かして、手前に陶芸施設であるアトリエ棟、奥に居住施設である住居棟という配置になっています。アトリエ棟は、この施設の性格を決定づけている"陶芸"にちなんで登り窯をモチーフとしたフォルム。窯の上屋のように奥へと上昇していく独特の形態をとり、さらに約36mの総延長にわたって半径125mの円弧を描いています。事務所や作陶準備室、焼成室といった機能ブロックは登り窯の焼室に見立てられ、その隙間空間に陶芸教室やギャラリー、サロンなどが配置されました。これらは、独立した空間ではなく奥に向かうレベル差によって区別され、訪れた人々は、さながら窯をめぐる炎のように施設内を流動的に体感できる構造となっています。

本来ならば公共施設として行政側が建設すべき性格の施設を、施主個人の地域に対する愛着から誕生させた「土と陶の工房 美乃里」。その文化・芸術面での貢献は高く評価され、(財)日本産業デザイン振興会による<平成11年度 グッドデザイン賞>施設部門賞を受賞しました。今後は、この施設が周辺建築・景観に与える影響も大きいと予想され、地域社会における波及効果が期待されています。

ゆるやかな曲線を描くユニークな屋根には、
土管型をした陶器瓦(7寸大紐丸)を採用。

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