瓦の知識

Q&A 瓦質問箱

自分の家の屋根を真剣に見たことなどなかったのですが、屋根は家にどんな影響を与えているのですか。どれくらい重要なんですか。
屋根は、とても大事です。たとえば、屋根が雨漏りをしているような場合、家の骨組みが徐々に腐蝕していきます。雨漏りはしていなくても、通気性が悪ければ、結露現象によりやはり腐食の原因となってしまうのです。また、通気性は、家の耐久年数に影響を及ぼすだけではありません。
近年、人工合板を大量に用いて、高気密なプレハブ住宅が増加していますが、アトピー性皮膚炎の原因といわれるハウスダストや家ダニも、通気性が関係しているのではないか言われています。土壁で粘土瓦屋根の木造住宅しかなかった頃は、そういった問題が見られなかったためです。
もちろん、人工合板の使用に不可欠な人工接着剤もなく、ホルムアルデヒドなど有害物質の心配もありませんでした。このように、家全体の健康性や快適性に、屋根は大きな影響を与えているのです。
屋根瓦の種類・形・材質によって、機能などに違いがあるのですか。

よく「雨露をしのぐ」といわれるように、屋根材の最も重要な働きは"防水機能"だと言えます。伝統的な瓦の形状は波型ですが、これは、一枚一枚の谷部に雨水を集めて水量を多くすることで、軒先の方へできるだけ早く流すために考えられた形です。まさに機能美であり、今日まで屋根瓦が伝えられ続けてきた最大の理由の一つと言えるでしょう。つぎに、断熱材としての機能も瓦は有しています。波形の屋根材では、暖まった空気が、空洞になった山部の内側を棟の方へ上昇していきます。これにより、真夏の直射熱を屋内に直接伝えることを防いでくれるわけです。同様の原理で通気性も良くなるため、結露現象を防ぐこともできます。当然、断熱に関しては素材自身がもつ熱伝導率も、大いに関係してきます。さらに、忘れられがちなのが"景観美"を形成するという、瓦ならではの機能です。

建築物は何十年にもわたって街並みを構成し、屋根は建築物の印象をかなり左右します。このため、少なくとも建物の耐久年数よりも極端に耐久年数の短い屋根材では、後々、景観美を損ねる原因となってしまいます。また、経年変化により極端に色あせたり、汚くなってしまうような素材も問題です。新築時の美しさはもちろん、年を経るごとに古美ていく瓦は、街並みと長期間に渡って調和のとれる屋根材です。ぜひとも、日本の美しい景観を構成する一員として相応しい屋根材を選んでください。

●瓦の通気性と断熱性に関する詳細情報は →「瓦の知識文庫 環境編1」へ

阪神淡路大震災のとき、屋根瓦が重いから家が倒壊したと聞きましたが。
震災直後、確かにマスコミでそのような情報が流されました。しかし、その後、専門家の調査によって、倒壊した家の大半が建築基準法の施行以前に建てられた家であり、屋根重量に耐えられる構造になっていなかったことが明らかにされました。これは、正式な学術報告書で全世界に発表されている事実です。マスコミによる訂正報道はありませんでしたが、活断層の真上という場合は別にして、建物の老朽化や筋交いの不足、白蟻などによる柱や梁の腐蝕などが原因だったのです。

また、震災以前は土葺き工法の家がほとんどでしたが、震災後は引掛桟葺工法が多く採用されるようになりました。引掛桟葺工法で各種団体が実物大の振動実験を行い、震度7クラスでもまったく問題なしという結果が出ています。また、西日本では地震よりも台風の被害が多く、家屋の木組全体を押さえ込む必要性から、屋根には重量をかけた方が良いとさえ言われてきました。土葺き工法にも断熱性の面などで長所があり、現在でも大量に土を使ってくれと注文する地域があるほどです。

●瓦の耐震性に関する詳細情報は →「瓦の知識文庫 環境編3」へ
粘土瓦は高いというイメージがあるのですが。

イニシャルコストとメンテナンスコストのどちらを問題視するかです。イニシャルコストの安い屋根材を採用した場合は、後々でメンテナンスコストがかさみがちです。また、断熱性を考えた場合、真夏の日中の屋根裏の温度が粘土瓦の屋根の場合、他の屋根材と比べ10度以上低いというデータがあります。つまり冷暖房費がかなり節約できるわけです。家とは何10年という単位で暮らす空間ですから、長期的な経済効果を考えるならば一概に「粘土瓦は高い」とは言えないでしょう。また、粘土瓦のメリットは、経済性ばかりでなく、環境問題の側面からも見直されています。前述の冷暖房節約は、とうぜん省エネルギーにつながります。素材そのものも、コンクリート製品のように発ガン性のあるアスペストを心配する必要がありません。

粘土瓦は、朽ちても自然な土に戻るだけなのです。現在、都市環境創造の分野において"人工地盤"という、生活空間の上にもう一度地盤を造って緑化しようというユニークな発想が提唱されています。しかし、 100年くらい経た瓦屋根は、苔や雑草が生えるなど、自然に屋根の上にもう一度地面ができるようなものだとおっしゃる建築家の先生がいらっしゃいます。つまり、粘土瓦による屋根は、もう1000年以上前から人工地盤の発想を先取しているのです。

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