interview

 

職人技を継承していくための励みになる受賞。

「海椿葉山」にしても「美乃里」にしても、職人さんの力が非常に大きい仕事でしたね。 特に「美乃里」は、工法についてもっと簡単な方法をアドバイスしてくれる工務店もあったりしたんですが、現場で建築が立ち上がっていく力強さが欲しかった。屋根はもちろん、コンクリートの列柱や木造小屋組など、やり直しのきかない状態のなか、現場でどんどん職人さんたちがバトンタッチされて、それぞれの力量が受け継がれていく。そういう形で建物を完成していく過程が貴重だと思うんです。「美乃里」が<平成11年度「グッドデザイン賞」施設部門賞>を受賞するなど、私の物件がさまざまな賞を受賞していますが、それをいちばん喜んでくれているのも職人さんたちですね。決して、私個人が世間から認められているのではなく、あんなに大変なことをやったという事実が評価されているわけで、それは職人さんにとって「やって良かった」という喜びにつながる。そして何より、次の世代へとつなげていく励みになりますよね。やったものが認められるということは、本人だけでなく、弟子など、後に続く人にも良い影響を与えますから。大きいから良い、高級だから素晴らしいということではありません。「海椿葉山」も「美乃里」も、個人の施主が建てたものです。国や自治体の公共物件でもなければ、大会社の施設でもない。とび抜けて高級な材料を使ったわけでもありません。いままであった材料を使い、いままでいた職人さんたちが造ったということ。ただ、限られた予算の枠のなかで、こんなことが、あんなことがと提案し、話しあいながら実現していった。最初は「なぜ、そんなややこしいことをするのか」と言っていたオーナーも、完成すると「想像以上のものができた、この人に頼んで良かった」という評価につながる。そこに価値があるんです。

“いまだ失われていない、瓦の魅力と可能性。

じつは最近は屋根ばっかり見て歩いているんですが、いちばん見苦しいと感じるのは軒先なんですよ。「海椿葉山」も「美乃里」も、雨樋がありません。もともと寺院などの日本建築には雨樋などなくて、雨が瓦からそのまま滴り落ちるところに美しさがあったんです。じつは雨というのは、建築をもっと美しく見せてくれるんですね。 かつて、和に洋が入ってきた時代、いつのまにか日本瓦が古くさいというイメージを持たれてしまった。「洋がおしゃれだ」ということでほとんどのメーカーが住宅にフラットな瓦を使うようになった。雨漏りを防ぐために勾配をつけてね。しかしそれは目先を変えただけで本物ではない。みんなが惑わされているんです。そうしたなか考えているのは、べつに瓦は屋根に葺かなくてもいいんじゃないかということ。カワラマンの山田脩二さんは「地べたから」といって敷瓦を焼いていますが、壁材に代わることも考えられる。倉敷などの風致地区では、土蔵などに、建物の腰まで瓦が使われていますよね。町屋のなかでも昔から使われている。防火のために壁は漆喰で足腰の部分に瓦と、適材適所で使われてきた。いつのまにか、それが失われたのは外壁材が変化したためですが、焼き物がもう一度使われる時代が来ると思います。そのために瓦の重さ、厚みを変えていくことも重要ですし、逆に重いから良いということもある。いまは建築自体が軽い感覚で造られている時代ですから、「瓦の持つ重たいイメージがいい」ということを言い続ける必要もあるでしょう。 また、均一でないもの、波のあるものを美しいと感じる感覚も重要です。一時期は薄れていたそんな意識が、また見直されてきたようですが、もともと日本という場所で育っていた文化ですから当然のことなのです。

profile

竹原義二(建築家)無有建築工房

1948年 徳島県生まれ。
1972年 大阪工業短期大学建築学科卒業。
大阪市立大学を経て、美建・設計事務所勤務。
1978年 無有建築工房設立。
1984年 大阪建築コンクール渡辺節賞。
1991年 大阪建築コンクール大阪府知事賞。
1992年 日本建築士会連合会賞優秀賞。
1996年 第9回村野藤吾賞受賞。
1997年 第4回関西建築家大賞受賞。
1998年 林野庁長官賞受賞。
1999年 日本建築学会作品選奨受賞。
1999年 通産省グッドデザイン賞受賞(土と陶の工房 美乃里)。
2000年 日本建築学会作品選集
2000年 JDCデザイン賞優秀賞受賞(海椿葉山)。
2000年 日本建築士会連合会賞優秀賞受賞(土と陶の工房 美乃里)。
2000年 通産省グッドデザイン賞受賞(海椿葉山)。
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